樹の里 足助

森林の豊かなチカラ

 豊かな森は水を涵養し、水は生き物を育てます。命の源。豊かな平野は後背の山があってこそのもの。二酸化炭素を吸収し、地球温暖化防止に役立つのも森林です。また、四季折々に豊かな表情を見せてくれる森は、私たちの心に自然の雄大さと安らぎを与えてくれます。森林浴という言葉も、今では当たり前のように使われています。

森林は守り、育てるもの

 木を育てることは森を育てることです。何十年も、何世代にもわたり育てられた木は、適切なサイクルで間伐を行い、枝を打つといった細やかな環境整備が必要です。今、山の暮らしが立ちゆかなくなっています。安く、早く、管理の楽な新建材や外材の影響で、国産材の利用は全体の2割程度しかないのです。私たちに豊かな生活をもたらしてくれる森を、そしてその森を育てる林業を、守っていかなくてはなりません。自分にできることから。それが、私たちが地域で育つ木を使う意味のひとつです。

近くの山の木で家を建てる

 木の住まいは、同じ気候風土の中で育った地域材が一番適しています。雨の多い地域、風の強い地域、長い年月の中で、それぞれの自然条件に合った強さを持ち合わせるからです。地域の旬の食材を使い、手づくりの食生活を提案するスローフードのように、地産地消の住まいづくりは理にかなったものと言えます。

住まいづくりが、地域づくりへ

 工業製品による合理化は、日本の家づくりを大きく変えました。地域の製材屋、材木屋、大工、左官など、顔の見えていた関係から、大規模な住宅産業への変化です。職人気質という言葉に表されていたような仕事への責任と誇り、家をつくる喜びから、何より利益が優先される仕組みへと変わりました。作り手の技術や、手間ひまがかかろうと納得いくまで仕事をしたいという気持ちは、後回しにされています。地域で育った木で家を建てることは、住み手にとって健康で快適であるだけでなく、森を守り、環境を守り、住まいづくりにかかわる地域の技術や人材を育てることにもつながるのです。